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どろとクライマックス
●「どろ」ソースと母液「クライマックス」


 あらゆるウスターソースはその仕上げに、「濾過」という工程を経ます。
これはソースの主原料が野菜や果実・香辛料であり、これらの皮質や繊維質等は溶解しにくく、舌にざらついたり、「うまみ」の成分を取り込んでしまいやすいので、フィルターを通過させて製品となる母液と分離させる必要があるためです。
 このうち熟成期間中に自然沈降した沈殿成分を 「澱」(おり)あるいは、その性状から当社社内でのみ通用する呼称「どろ」と呼ばれ、沈殿させて分離させる製法(沈殿法)では、ソース熟成時にどうしても発生してしまう副産物でした。当社では大正末期のウスターソース発売当初から、発生量も成分も不安定なこの「どろ」の処分に困り続けていました。
  しかし、昭和11年になってようやく業務用として壺や瓶に詰められ、一部の食堂等に「少し辛目のかくし味」として不定期に少量だけ流れ続ける貴(奇)重品として扱われるようになりました。
 本来ならばウスターソースの母液確保効率を高め、大量生産するには単純に「どろ」が発生しにくい製法を追求することが経済的には正義です。そのためには、
 (1) 原料の生野菜やピューレを濾過済みのジュースに変更する
 (2) 香辛料を溶解しやすいエッセンスに置き換える
 (3) 酵素やアルコールの働きをかりて原料を抽出する
 (4) 香味成分を高度濃縮し、一定期間熟成 させて原料モルトをつくりこれを希釈して製造時に再び還元させる
等の製法を選択する必要があります。
 仕込んだ母液のほとんどが製品になることから、これらの製法を当社内では撹拌(かくはん)法と呼び、長期熟成のあまり必要でない一部の濃厚ソースはこの方法で現在も製造しています。
  ところがこの撹拌製法では、設備のせいもあってか、充分に納得できるウスターソースが当社では誕生しませんでした。
そこで平成5年、発想を逆転させて沈殿物「どろ」の発生量に制限されることなく、自由奔放に原料を選んで、りんごやトマト・ たまねぎ・レモン等の野菜果実を果肉のまま使ったり、粒子の大きな香辛料もふんだんに使用したりして、理想的な 「ウスター母液」を作り上げる事だけに専念してみました。このために大量に発生してしまった沈殿物の「どろ」は、その特徴を生かしてきちんと商品化して発売する方法を取りました。そして、この最もクラシカルな製法により誕生した上澄みを「オリバークライマックス」と名付けてシリーズ共通のモルトとし、高品位ソースとして贈答用に製品化すると同時に、当社の他の製品の隠し味に抜擢しました。
  幸いにして一方の副産物「どろ」は、母液自体の成分が優れている事と、単一製品の沈殿物とあって非常に安定しており、発生量も以前よりは比較的潤沢なため、結果的には過去のそれをはるかに凌ぐ高品質の沈殿物となり、オリバーソースを代表できる新しい調味料となりました。

 この「どろ」は、ソース本来の持っている野菜の旨味と香辛料の辛味がバランスよく調和しており、独特のするどい味わいが広がります。 長期熟成したソースだけが持つ独特のエキスがぎっしりと詰まっているので、カレー・お好み焼・焼そば・そばめし・たこやきはもちろん、コクを出したいあらゆる料理の仕上げに打ってつけです。 工夫次第で本格的な風味が料理に加わり、またお好みの辛さに調整できることから「魔法のソース」と呼べるかもしれません。